【陸上競技】女子三段跳びで12m48cmを跳ぶ高校生は、なぜ3ヶ月で記録を63cmも更新できたのか?~三段跳び少女の奇跡(その4)

TRACK&FIELD STORY
-TRIPLE JUMP-

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TRIPPLE JUMP

全国インターハイ女子三段跳び予選

8月
NDソフトスタジアム山形。
全国インターハイ陸上競技大会最終日。

前日に山形県に入った川見店主は、この日、スタンドのほぼ最前列で試合を観戦していた。
その視線は、ひとりの女の子を追っている。

女子三段跳び予選は、午前10時過ぎからはじまっていた。
出場選手は44名。
試技は3回行われ、予選通過標準記録12m15cmを跳べば、自動的に決勝進出が決まる。

12m15cm――それは、彼女が2か月前に「1度だけ」出した「自己ベスト記録」と同じ距離だった。

すでに彼女は、試技1回目を12m10cm、2回目を11m93cmで終えていた。
決勝進出には、あと5cm記録を伸ばし、自己タイ記録で跳ぶ必要があった。

3回目、最後の試技。
彼女の夏が終わるのか、つづくのか。
すべてはこの跳躍にかかっていた。
川見店主は、心臓が止まりそうだった。
助走路の彼女が、手を挙げて大きく叫んだ。

「いきまーーす!」

一瞬カラダをためて、踏み出した。
徐々に加速し、トップスピードに乗る。
踏み切り板に足を叩きつけ、前方へ勢いよく弾け跳ぶ。
ホップ、ステップ、ジャンプ。

川見店主は思わず身を乗り出していた。

記録 12m31cm

彼女は、自己ベスト記録を16cmも更新し、決勝進出を決めた。

川見店主は、ホッとため息をついた。
鼓動が高まっているのを聞いた。
こんな試合の観戦は、カラダに悪いなと、ひとり苦笑いした。

予選の跳躍を川見店主が撮影した1枚

「負けるはずがない」

川見店主をはじめ、スタンドで彼女を応援する人たちは、ドキドキハラハラと寿命を縮めていた。
では、当のご本人は、どんな気持ちで試合にのぞんでいたのか?

実は、彼女は、楽しくてならなかった。
緊張よりも喜びが勝っていた。
跳べば跳ぶほど、さらに跳べる気がしていた。
予選の試技が2回終わって、決勝進出の圏外にいても、不安は一切なかった。
自分がここで負けるはずがないと思っていた。

この日の前日、彼女は、こんなことを言って、顔を合わせた川見店主を驚かせている。

「明日は、12m70cmを跳びます。そして、優勝します」

全国インターハイ女子三段跳決勝

午後2時30分。
女子三段跳び決勝がはじまった。
出場選手は12名。
8位までの入賞ラインは、12m30cmほどと予想されていた。

12m30cm――それは、彼女が午前中の予選で出した自己ベスト記録と、ほぼ同じ距離だ。

観衆が見守る中、彼女は助走路に立った。

試技1回目。
彼女は12m20cmの跳躍を見せた。
この跳躍は決して悪くはなかった。
難しいのは風向きだった。
ピット前に設置してある吹き流しが、くるくると方向を変えているのが気になった。

試技2回目。
彼女はふたたび助走路に立った。
大きく深呼吸をした。
右手を挙げた彼女の声が、競技場に響き渡った。

「いきまーーす!」

風向きが定まるのを待ち、踏み出した。
加速し、トップスピードに乗る。
ホップ、ステップ、ジャンプ。

「おおーー!」

大きな歓声があがった。
彼女の体は、これまでのどの選手よりも遠くの地点に着地した。

記録 12m48cm

なんと、予選で16cm更新した自己ベスト記録を、さらに17cmも更新した
順位は1位に浮上した。

この彼女の跳躍が、競い合う他選手たちにも火をつけた。
その後、彼女の記録を越える大きな跳躍がつづいた。
誰かが跳ぶたびに、順位は目まぐるしく入れ替わった。
さすがは全国インターハイだと、見る者を唸(うな)らせた。

決勝の激闘はつづいた。
午後4時。
6回にわたるすべての選手の試技が終わった。
優勝者の記録は、12m73cmだった。
彼女の最高記録12m48cmは、上から6番目だった。

「あの人は何者なんだろう?」

翌日。
大阪に戻った川見店主は、彼女と電話で話した。

「全国インターハイおつかれさま。6位入賞おめでとう!」

「ありがとうございます」

「でも、悔しいんだよね」

「悔しいです。12m70cmを跳ぶイメージはできてますから」

「思い描けるってことは、実現できるってことだからね」

「はい」

「だから跳べるはずなんだよ。ただ、3か月ではカラダづくりが間に合わなかったよね」

「そうだと思います」

「悔しいよね。でも、こんな風に悔しいことが、楽しいよね!」

「はい、今、すごく楽しいんです!」

3か月前、彼女の三段跳び自己ベスト記録は、11m85cmだった。
今、そこから63cmも先にたどり着いた
けれど、もっともっと、遠くまで跳んでいきたい。
彼女は言う。

「イメージでは、砂のピットを越えるくらいにまで跳んでるんです(笑)」

全国インターハイの決勝で2回目の試技に挑む時、彼女は、これまで自分を応援してくれた人たちの顔を思い浮かべていたらしい。
その中には、川見店主の顔もあったとか。

そして、今は、こんな風に思っている。

「あのおばちゃんは、私にぴったりのインソールを作れるし、私の足の痛みも消しちゃうし、私のカラダの動きも全部わかるみたい……あの人、一体、何者なんだろう?」

(おわりです)

この記事は2017年8月に旧ブログで公開したものです。今回、それを加筆訂正し再公開しました。

五輪代表選手から小学生まで。みんな自己新記録を更新しました。

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