

今から100年以上も前の話。
1912年の第5回オリンピック・ストックホルム大会で、日本人初のオリンピック選手・金栗四三さんは、足袋(たび)を履いてマラソンに出場しました。
その足袋を作ったのが、播磨屋(ハリマヤ)足袋店の足袋職人・黒坂辛作さんでした。
播磨屋足袋店は戦後にはシューズメーカー「ハリマヤ」に発展。
その巧みな技術から生み出すランニングシューズは、たくさんの陸上競技選手やランナーたちに愛用されました。
しかし「ハリマヤ」は、1990年頃に忽然と姿を消してしまいました。
オリンピアサンワーズに現存する資料と、みなさんからいただいた言葉で紡(つむ)ぐ、伝説のシューズメーカー「ハリマヤ」の歴史と、日本のランニングシューズ100年の物語。
作成:オリンピアサンワーズネット編集部


今から100年以上も前の話。
1912年の第5回オリンピック・ストックホルム大会で、
日本人初のオリンピック選手・金栗四三さんは、
足袋(たび)を履いてマラソンに出場しました。
その足袋を作ったのが、
播磨屋(ハリマヤ)足袋店の足袋職人・黒坂辛作さんでした。
播磨屋足袋店は戦後にはシューズメーカー「ハリマヤ」に発展。
その巧みな技術から生み出すランニングシューズは、
たくさんの陸上競技選手やランナーたちに愛用されました。
しかし「ハリマヤ」は、1990年頃に忽然と姿を消してしまいました。
オリンピアサンワーズに現存する資料と、
みなさんからいただいた言葉で紡(つむ)ぐ、
伝説のシューズメーカー「ハリマヤ」の歴史と、
日本のランニングシューズ100年の物語。
作成:オリンピアサンワーズネット編集部
【第11章】
オリンピアサンワーズ川見店主に聞く
世界を制した
カナグリシューズの秘密
2019年NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺」の放送に先駆けて、川見店主は、新聞・雑誌等のメディアから「ハリマヤ」に関する取材を数多く受けることに。
「りぶる」新春号の「2020年東京五輪特集」では、フルカラー6ページにわたり、川見店主が自身の「ハリマヤ」観と「シュー・フィッティング」観を語る模様が掲載された。その一部を抜粋し紹介します。


ハリマヤの技術を後世に残したい
1950年頃、「播磨屋足袋店」は、黒坂から家督を継いだ與田が2代目社長となり、スポーツシューズメーカーの「ハリマヤ運動用品(以下、ハリマヤ)として新たな一歩を踏み出していました。
與田も、黒坂の志を受け継ぎ、より速く走るためのシューズづくりに情熱を注ぎ、アイデアが浮かぶと真夜中でもノートに書きとめ、研究・改良し続けたと言います。
その後もハリマヤは、「カナグリ」の名を冠したマラソンシューズや、陸上競技スパイクシューズを次々に発売し、多くの選手やランナーを魅了していきます。

しかし、1990年頃に"倒産するかもしれない"という噂がスポーツ用品の業界に流れました。各販売店が慌てて返品する中、川見さんはハリマヤのシューズを買い集めます。
「将来の靴文化のためにも、ハリマヤの技術を後世に残したいと思いました。ハリマヤのシューズの"木型"は、本当に日本人の足型に合いました。しかも、靴下のように袋縫されているので、足を入れると吸い付くようにフィットする。この履き心地の良さは、足袋が基本になっているからだと思います。」(川見)
結局、ハリマヤは経営難で倒産します。川見さんが大切に保管するシューズを見せていただくと、
「ハリマヤのカラーはシンプルで、形はちょっと"ブサイク"でしょ(笑)。でも、しょうがないんです。日本人は"ブサイク"な足型の人が多いから。」

デザインではなく、3本のラインで布が伸びるのを防いでいる
「最近はカラフルで、細みの"キレイ"なシューズが流行ってますが、自分の足の形に合わないシューズを履くと、外反母趾や内反小趾になります。」
一人ひとりの足の形がちがうように、シューズの形も製品によって異なります。そこで、川見さんは、お客さまの足を見て靴を選び、さらに、立体的な足の形状にぴったりと合うインソールをハンドメイド、それを独自の技術でシューズに合わせます。すると、オーダーメイドのシューズを履くように、既製の靴が足にフィットします。
「すべての靴は土踏まずをサポートして完成すると思っています。足の形状に合わせて隙間なくジャストフィットすることで、足元の安定性は飛躍的にアップします。体のブレを抑え、より歩きやすく、より走りやすい姿勢をキープすることができます」
川見さんは、速く走ること、人が健康に生きること、女性が美しくあること、この三つに共通点があると言います。
「それは正しい姿勢で立ち、歩くことです。陸上の100mのトップアスリートは姿勢が素晴らしい。その立ち姿を真似するだけでも、人は美しくなれます。」
"カナグリシューズ"が世界を制したのは、希代の"木型"と職人の愛情
また、川見さんはシューズとともに、ハリマヤの資料を大切に保存しています。これらが新たな物語を紡ぎ出すきっかけともなりました。
「3年ほど前になるでしょうか。テレビ局の人から電話がかかってきたんです。それで、ハリマヤに関する資料をお貸ししました。てっきり1時間ぐらいの番組を制作するのかと思っていたら、まさか大河ドラマの『いだてん』だったとは…。もうビックリです。」
「金栗さんと黒坂さんが命を懸けてやり遂げようとしたことを、脚本家の宮藤官九郎さんがどのように描くのか、時代考証を含め、とても楽しみにしています。また、これまでは想像するしかなかった、黒坂さんの足袋づくりの苦労などが、映像として見られたらいいなと思っています。」
「そして、小道具で登場する足袋も、ぜひこだわってほしいです。日本のマラソンシューズの原型は、黒坂さんの足袋だと、私は思っていますので。」
最後に、「カナグリシューズ」が世界を制した秘密について尋ねると、
「それは、シューズを作るための"木型"と、職人さんの愛情ではないでしょうか。足の悪かった黒坂さんも、気持ちの上では金栗さんと一緒に走っていたのだと思います。」
ハリマヤの"木型"がどこに消えたのか、倒産した今となっては知るすべもありません。
「残念ながらハリマヤはなくなりました。でも、金栗さんの情熱や、黒坂さんの職人魂は、今もこうして語り継がれています。黒坂さんは、金栗さんと同じ思いに立ち、二人三脚で足袋を作り続けました。私も、お客さまお一人おひとりに寄り添い、最高の靴を履いていただけるシューズのフィッティングに、さらに挑戦していきたいと思っています」
と、川見さんは笑顔で語ってくれました。

(更新2025年01月17日)
(初出2019年01月11日)

編集メモ
- 「りぶる」は某政党女性局の広報紙。毎年の新春号には、NHK大河ドラマにまつわる特集を組むのが恒例だそうです。
- 2019年の新春号は、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺」にちなみ、2020東京五輪特集。日本人初の五輪選手・金栗四三さんの生涯を紹介した記事と共に、川見店主の記事が6ページにわたり掲載されました。
- 取材を受けたのは、2018年11月下旬。川見店主は2時間にわたり、ハリマヤとシュー・フィッティングについて語りまくりました。
- 取材には専属カメラマンも同行し、「写真嫌い」の川見店主を容赦なくバシャバシャと撮影。このページに掲載したプロフェッショナルな画像は、ご厚意でいただきました。ありがとうございました。
【第11章】
オリンピアサンワーズ川見店主に聞く
世界を制した
カナグリシューズの秘密
2019年NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺」の放送に先駆けて、川見店主は、新聞・雑誌等のメディアから「ハリマヤ」に関する取材を数多く受けることに。
「りぶる」新春号の「2020年東京五輪特集」では、フルカラー6ページにわたり、川見店主が自身の「ハリマヤ」観と「シュー・フィッティング」観を語る模様が掲載された。その一部を抜粋し紹介します。


ハリマヤの技術を後世に残したい
1950年頃、「播磨屋足袋店」は、黒坂から家督を継いだ與田が2代目社長となり、スポーツシューズメーカーの「ハリマヤ運動用品(以下、ハリマヤ)として新たな一歩を踏み出していました。
與田も、黒坂の志を受け継ぎ、より速く走るためのシューズづくりに情熱を注ぎ、アイデアが浮かぶと真夜中でもノートに書きとめ、研究・改良し続けたと言います。
その後もハリマヤは、「カナグリ」の名を冠したマラソンシューズや、陸上競技スパイクシューズを次々に発売し、多くの選手やランナーを魅了していきます。

しかし、1990年頃に"倒産するかもしれない"という噂がスポーツ用品の業界に流れました。
各販売店が慌てて返品する中、川見さんはハリマヤのシューズを買い集めます。
「将来の靴文化のためにも、ハリマヤの技術を後世に残したいと思いました。ハリマヤのシューズの"木型"は、本当に日本人の足型に合いました。しかも、靴下のように袋縫されているので、足を入れると吸い付くようにフィットする。この履き心地の良さは、足袋が基本になっているからだと思います。」(川見)
結局、ハリマヤは経営難で倒産します。
川見さんが大切に保管するシューズを見せていただくと、
「ハリマヤのカラーはシンプルで、形はちょっと"ブサイク"でしょ(笑)。でも、しょうがないんです。日本人は"ブサイク"な足型の人が多いから。」

デザインではなく、3本のラインで布が伸びるのを防いでいる
「最近はカラフルで、細みの"キレイ"なシューズが流行ってますが、自分の足の形に合わないシューズを履くと、外反母趾や内反小趾になります。」
一人ひとりの足の形がちがうように、シューズの形も製品によって異なります。
そこで、川見さんは、お客さまの足を見て靴を選び、さらに、立体的な足の形状にぴったりと合うインソールをハンドメイド、それを独自の技術でシューズに合わせます。
すると、オーダーメイドのシューズを履くように、既製の靴が足にフィットします。
「すべての靴は土踏まずをサポートして完成すると思っています。足の形状に合わせて隙間なくジャストフィットすることで、足元の安定性は飛躍的にアップします。体のブレを抑え、より歩きやすく、より走りやすい姿勢をキープすることができます」
川見さんは、速く走ること、人が健康に生きること、女性が美しくあること、この三つに共通点があると言います。
「それは正しい姿勢で立ち、歩くことです。陸上の100mのトップアスリートは姿勢が素晴らしい。その立ち姿を真似するだけでも、人は美しくなれます。」
"カナグリシューズ"が世界を制したのは、希代の"木型"と職人の愛情
また、川見さんはシューズとともに、ハリマヤの資料を大切に保存しています。
これらが新たな物語を紡ぎ出すきっかけともなりました。
「3年ほど前になるでしょうか。テレビ局の人から電話がかかってきたんです。それで、ハリマヤに関する資料をお貸ししました。てっきり1時間ぐらいの番組を制作するのかと思っていたら、まさか大河ドラマの『いだてん』だったとは…。もうビックリです。」
「金栗さんと黒坂さんが命を懸けてやり遂げようとしたことを、脚本家の宮藤官九郎さんがどのように描くのか、時代考証を含め、とても楽しみにしています。また、これまでは想像するしかなかった、黒坂さんの足袋づくりの苦労などが、映像として見られたらいいなと思っています。」
「そして、小道具で登場する足袋も、ぜひこだわってほしいです。日本のマラソンシューズの原型は、黒坂さんの足袋だと、私は思っていますので。」
最後に、「カナグリシューズ」が世界を制した秘密について尋ねると、
「それは、シューズを作るための"木型"と、職人さんの愛情ではないでしょうか。足の悪かった黒坂さんも、気持ちの上では金栗さんと一緒に走っていたのだと思います。」
ハリマヤの"木型"がどこに消えたのか、倒産した今となっては知るすべもありません。
「残念ながらハリマヤはなくなりました。でも、金栗さんの情熱や、黒坂さんの職人魂は、今もこうして語り継がれています。黒坂さんは、金栗さんと同じ思いに立ち、二人三脚で足袋を作り続けました。私も、お客さまお一人おひとりに寄り添い、最高の靴を履いていただけるシューズのフィッティングに、さらに挑戦していきたいと思っています」
と、川見さんは笑顔で語ってくれました。

(更新2025年01月17日)
(初出2019年01月11日)

編集メモ
- 「りぶる」は某政党女性局の広報紙。毎年の新春号には、NHK大河ドラマにまつわる特集を組むのが恒例だそうです。
- 2019年の新春号は、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺」にちなみ、2020東京五輪特集。日本人初の五輪選手・金栗四三さんの生涯を紹介した記事と共に、川見店主の記事が6ページにわたり掲載されました。
- 取材を受けたのは、2018年11月下旬。川見店主は2時間にわたり、ハリマヤとシュー・フィッティングについて語りまくりました。
- 取材には専属カメラマンも同行し、「写真嫌い」の川見店主を容赦なくバシャバシャと撮影。このページに掲載したプロフェッショナルな画像は、ご厚意でいただきました。ありがとうございました。
Dedicated to the memories of Shinsaku Kurosaka.
Special thanks to Tomiyo Fukuda.
Produced by Olympia Sunwards


オーダーメイドを極めた
最高級のインソール技術
当店が作成するオーダーメイドのインソール(中敷)は、 アメリカに本社のあるアムフィット社製。あなたの足型をインソール上に再現する画期的なシステムが足とシューズのジャストフィットを実現します。パフォーマンスアップ、ケガや故障の防止、疲労軽減、アライメント補正など多くの効果が実証されています。




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